ROUNDUP / FRONTIER & LOCAL

10月最初の動き
Argon、125Bローカル、Ollaya

GoogleがGemini 4 Argonを発表し、1250億パラメータのMoEを一般PCで動かすStrataと、意思決定モデルをローカル実行するOllayaが登場しました。公称値と実測値、そして各ベンチで見えた弱点までを整理します。2026.10.02

10月1日から2日にかけて、フロンティアモデルとローカル実行の両側で大きな動きがありました。Googleは次期主力の先駆けGemini 4 Argonを発表し、同時期に、1,250億パラメータの巨大モデルを一般PCで動かす推論エンジンStrata、意思決定モデルをローカルで走らせるOllayaが登場しました。話題性の高い3件を、確認できる事実と未検証の主張を分けて整理します。

77.9%ArgonのDeepSWE v1.1(GPT-6 Astraは74.1%)
1MArgonの出力トークン上限(従来64K)
94.6 tok/sStrata公称(RTX 5070・4Kコンテキスト)
125B/約6BQwen3.8-Flash-Nextの総パラメータと活性量
89msOllaya・5問処理(RTX 4090、winnow:e4b)
表記ルール
  • 確認済み 公式ブログ・GitHub・一次資料で確認した事実
  • 提供元公称 開発元・ベンダー自身の発表。第三者検証は未完了
  • 第三者検証 外部の開発者・メディア・実測者が独自に確認したもの
  • AIfrontierの見解 編集部の解釈

1. Gemini 4 Argon:Googleのフロンティア再挑戦提供元公称

Googleは2026年9月30日、次期「Gemini 4」シリーズの先駆けとなるGemini 4 Argonを発表しました。最大の特徴は出力トークン上限を64Kから100万トークンへ引き上げたことです。長時間の一続きの処理を1回で完結させることを狙っています。 出典:Google

スンダー・ピチャイCEOは「次期モデルをめぐる議論が広がっていることを受け、できるだけ早く先行公開したかった」と説明しています。Google社内では既に数千人の従業員がコーディングや調査、文書作成に利用しているとされます。 出典:Google AI(X)

ベンチマークArgon比較判定
DeepSWE v1.1(実コードベースの開発)77.9%Astra 74.1%/Opus 5.5 74.2%/Fable 5.1 67.4%首位
Vals Index(企業実務)68.9%Astra 63.1%/Opus 5.5 67.0%首位
Vals Finance Agent v2(金融調査)65.4%Fable 5.1 58.9%/Astra 53.5%首位
AutomationBench(業務自動化)51.3%Astra 41.4%/Opus 5.5 42.5%首位
CWE-bench v1(脆弱性修正)68%Astra 68%(同率)/Opus 5.5 67%同率首位
FrontierSWE v2(別系統のSWE)55.0%Astra 65.5%/Opus 5.5 62.3%劣後

AIfrontierの見解 DeepSWEでは首位の一方、FrontierSWE v2では下位2モデルに約7〜10ポイント差をつけられています。ベンチマークは作成主体によって順位が変わるため、「Argonが全項目で最強」と読むのは早計です。第三者の追試を待ちたいところです。

Googleは社内での実利用も公表しています。複数のArgonエージェントがデータセンターのプロファイリング情報を分析してメモリを自律最適化し、300TiB以上を削減(最終的に500TiB〜1PiBを見込み)。C/C++からRustへの移行では、re2やlibgav1からFuchsiaのZirconカーネル(80万行超)までが対象で、libgav1では既存Rust版の約3万2,000行のSIMDコードを書き換え、同出力のまま2.7倍高速化したとしています。 出典:9to5Google 出典:Ars Technica

提供は段階的です。現在はサイバー防御の信頼できる担当者向け「Fairwind Program」と社内が中心で、まもなくGoogle AI Ultra契約者と有料API顧客に順次開放。料金は導入価格が入力100万トークンあたり2ドル・出力10ドル(キャッシュ入力は95%引き)、導入期間後は入力4ドル・出力20ドルです。サイバー能力が高いため、信頼できる防御担当者にはサイバー用のガードレールを外して提供するとしています。

2. Strata:1,250億パラメータを一般PCで提供元公称

リンクに関する注意

ご指定の https://www.strataai.solutions/ は、AI研修・コンサルティングを手がける別会社「Strata AI Solutions」のサイトでした。本記事で扱う推論エンジン「Strata」とは無関係です。本家はオープンソースプロジェクトで、配布は GitHub: Niko1221/Strata です。同じ「Strata」の名を持つ長文コンテキスト向けキャッシュ研究(arXiv:2508.18572)も別プロジェクトです。

Strataは、Qwen3.8-Flash-Next(総1,250億パラメータ、トークンごとに約60億のみ活性するMoE)を、一般のデスクトップPCで動かすため専用に設計された推論サーバーです。要件はNVIDIA GPU 1枚(VRAM 12〜24GB)+システムメモリ64GB+x86 CPU。OpenAI互換とAnthropic互換のAPIをlocalhostで公開します。 出典:GitHub(リリースノート)

層役割
GPU(VRAM)AttentionとDeltaNetミキサー層、ルーター、共有エキスパート、出力ヘッド、多トークン予測層、KVキャッシュ、よく使うエキスパートの適応キャッシュ
システムRAM全24,576エキスパートを常駐。GPUキャッシュに無い分をAVX-512/AVX2のCPUカーネルが評価
SSD28.8GBのn-gramテーブルを保持し、トークンごとに数行だけOSのページキャッシュ経由で読む

公表ベンチマークは、最小量子化でRTX 5070・4Kコンテキストで最大94.6トークン/秒、128Kで65.1トークン/秒。RTX 3090での利用者報告は128Kで約70トークン/秒で、プロジェクトは3090と40シリーズの数値を推定値と明記しています。 出典:AlphaSignal

第三者の実測第三者検証

実際に導入した開発者の記録では、RTX 5090(32GB)+Ryzen AI MAX+ 395+約128GB RAM(Linux)で、セットアップにモデル84GBのダウンロードを含めて約2時間15分。IQ3_S量子化・128Kコンテキストで400トークンのコード生成が毎秒114トークン、コーディングタスクの96.7%を解いたと報告されています。 出典:note

AIfrontierの見解 見落とされがちな制約が3つあります。①この1モデル専用で、他のモデルは動きません。②速度は公開値でも、独立した追試はまだ限定的で、一部の数値は推定値です。③MoEの「活性は60億」という性質を、SSDとCPUにまたがるメモリ階層で支える設計なので、非MoEの巨大モデルに同じ手法がそのまま効くわけではありません。「どの巨大モデルでも動く」ではなく「このMoEを、この構成で動かす」と読むのが正確です。

3. Ollaya:意思決定モデルをローカルで第三者検証

Ollayaは、Jevのような意思決定モデルをローカルで引いて動かすアプリです(Apache License 2.0、Windows・macOS・Linux・Docker対応)。TypeSafe互換のAPI(/v1/systemone・/v1/decisions・/v1/models)を提供し、公式のTypeSafe Python SDK 0.7.1がそのまま動くとしています。 出典:Ollaya公式 出典:GitHub

GIGAZINEの例では、モデル「Winnow-E4B」に対し「今年に入ってから3回目の二重請求です。今日中に返金してくれないと別のサービスに乗り換えます」と入力すると、意図:返金要求(91%)/緊急性:あり(92%)/怒りレベル:2.89(86%)と返しました。

項目OllayaOllama 0.35
モデル15系統(エンコーダ:laya・nli・gliclass・von、デコーダ:winnow・kev・decider・nimble・jeb・jeeves・cygnetなど)Nimble・Tev1のみ(デコーダ)
確率の較正各作者の温度で較正済み。Modelfileで再調整可能生のsoftmax(未較正と明記)
1問あたりの選択肢最大255最大26(GIGAZINEは15と記載)
1リクエストの質問数最大256最大64

同じRTX 4090での比較では、winnow:e4bが5問を89msで処理し、型付き判断の精度0.722(TypeSafeのホスト版Jevは0.738、236〜276ms)。layaは約10msでCPUでも動きます。同じNimbleの重みではOllamaの方が高速だと、Ollaya自身が認めています。 出典:GIGAZINE

4. Jeffの追加情報:22msと28ms第三者検証

9月29日のGIGAZINE記事で、Jeffの詳細が追加されました。パラメータ8億のモデルならRTX PRO 6000で1判断あたり約22ms、M4 Maxで約28ms。系統は「Qwen3.5 0.8B」「Qwen3.5 2B」「Gemma 4 E2B」ベースの3種類で、コードはMIT、重みはApache 2.0です。学習はRTX PRO 6000 1台(8億で約2時間、20億で約3時間半)、学習データはDGX Spark 2台上のオープンモデルQwen3.8-Flash-Nextが生成し、クラウドGPUは不使用。Jev開発元のTypeSafe AIとは無関係で、承認も受けていないと明記されています。 出典:GIGAZINE

5. 実務パターン:判断を質問に変えるAIfrontierの見解

実務家向けに、エージェントの工程を4つに分ける整理が共有されています。 出典:X(polydao)

分類担当例
生成LLM文章作成、コード生成
厳密な規則コード決まった条件分岐、検証
選択・判断意思決定モデル(Jev等)次のツールはどれか、この情報は関連するか、このコマンドは安全か
不可逆な操作人間本番反映、送信、支払い

要点は、エージェントの記録を開いて「生成していない瞬間」を数え、それを質問文に書き直し、較正された confidence で分岐させること。確信度が低い難件だけを上位モデル(例:Kimi K3)に回す設計です。「全部を最上位モデルで回す」より費用と速度の両面で有利になります。

6. 見えてきたことAIfrontierの見解

総括

10月最初の週は、「上(フロンティア)」と「下(ローカル)」が同時に動きました。Gemini 4 Argonは出力100万トークンという新しい上限を提示しつつ、ベンチによっては劣後もあり、実力の全体像は第三者の追試待ちです。一方、StrataとOllayaは、これまでサーバーGPU前提だった規模の処理を、手元のPCへ引き寄せました。両者は競合ではなく層が違います。大規模で難しい処理はフロンティアAPIへ、大量で定型的な判断はローカルへ——この二段構えが、2026年後半の現実的な構成になりつつあります。導入を検討する際は、ベンダーの公称値ではなく、自分のデータと自分のマシンで測ることが結論を左右します。

※Strataの公開URLとしてご指定いただいた strataai.solutions は別企業のサイトでした。本記事はGitHub上の本体リポジトリおよび第三者報道に基づいています。ベンチマークの多くは提供元の公表値で、独立した追試は限定的です。

出典

  • Google「Gemini 4 Argon」公式ブログ https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-4-argon/
  • Google AI(X)の発表 https://x.com/GoogleAI/status/2105388478683119904
  • 9to5Google「Gemini 4 Argon announcement」(9/30) https://9to5google.com/2026/09/30/gemini-4-argon-announcement/
  • Ars Technica「Google announces Gemini 4 Argon…」(9/30) https://arstechnica.com/google/2026/09/google-announces-gemini-4-argon-ai-model-but-you-cant-use-it-yet/
  • GIGAZINE「GoogleがGemini 4 Argonを発表」(10/1) https://gigazine.net/news/20261001-google-gemini-4-argon/
  • GitHub「Niko1221/Strata」リリースノート https://github.com/Niko1221/Strata/releases
  • AlphaSignal「Strata serves a 125B MoE from a consumer PC」 https://alphasignal.ai/news/strata-runs-a-125b-ai-model-on-a-regular-gaming-pc
  • note「Strataを2日間導入してみた」 https://note.com/zephel01/n/nce0d0c3328cd
  • Ollaya公式サイト/GitHub(ollaya-dev/ollaya) https://ollaya.dev/
  • GIGAZINE「Ollaya」(10/1) https://gigazine.net/news/20261001-ollaya-run-decision-model/
  • GIGAZINE「Jeff」(9/29) https://gigazine.net/news/20260929-jeff/
  • X(polydao)エージェント設計の実務ガイド https://x.com/polydao/status/2104783226833186920