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AI for Science
特設

AIが数学・物理・生物の未解決問題にどう取り組んでいるかを特設で追います。分野別の現在地と、深掘り記事への入口をまとめます。特設・最終更新 2026.10.03

このページは、AIが数学・物理・生物の未解決問題にどう取り組んでいるかを特設で追うハブです。個別の深掘り記事と、分野別の現在地をまとめます。最終更新:2026年10月3日。

2026年の到達点
  • 数学:エルデシュの単位距離予想を反証(5月)、Astra内部版が10件を解決・前進(8月)、リーマンゼータの零点比率の下界を41.6%→67.2%(8月)、フェルマーの最終定理をLeanで完全形式化(9月)
  • 物理:グルーオンの樹木振幅の新しい公式(2月)、宇宙ひもの重力波スペクトルの厳密解(3月)
  • 生物:Claudeが設計したタンパク質結合体が15標的中14で結合(8月)、Co-ScientistがNature掲載(5月)

数学:証明と反例

成果時期主体
単位距離予想の反証(約80年来)2026.05OpenAI内部モデル
10件の未解決問題を解決・前進(Lean証明付き)2026.08Astra内部版
リーマンゼータ零点の下界を41.6%→67.2%2026.08Anthropic(未公開Claude)
フェルマーの最終定理の完全形式化2026.09Anthropic(約1,300万行のLean)
ナビエ–ストークス問題にAI生成の証明2026.09OpenAI内部システム(約1万エージェント)

ナビエ–ストークスは、正しさはLeanのコンパイルで概ね合意される一方、「外力なしの本来の問題には届かない」ことを示す論文が出ており、意味づけをめぐる議論が続いています。

OpenAI、数学の成果の「責任ある公開」へ方針転換(2026年10月)確認済み

OpenAIは、内部フロンティアモデルが生んだ数学の成果を広く公開しました。従来はプレスリリース先行で批判を浴びていましたが、今回はGitHubリポジトリで公開し、論文の改訂と引用の手順を定めています。多数の証明をLeanで形式化し、モデルの推論の要約10件、ChatGPT Proでの使用量に換算した計算コスト、試行した問題数も公表しました。1件あたり平均で約3時間分のChatGPT Pro推論に相当する計算を使ったとしています。 出典:OpenAI

背景には、IASの数学・AI諮問グループ(AGMAI)の助言があります。同グループは2026年9月29日の勧告で、「人間が理解していないAI生成の数学」を公開する際の規範を提示しました。①関連文献を調査して引用する ②通常の論文の作法で書き直す ③モデル名・プロンプト・推論の要約・所要時間・計算コストを公開する ④可能な限り形式化する ⑤同時公開時は失敗した問題数と選定方法も示す——加えて、人間の理解を促す活動(会議・学校・解説書)への資金提供を求めています。 出典:AGMAI

AIfrontierの見解 これは数学界の批判に対する具体的な応答です。特に「失敗した問題数を公表する」という要求は、成功例だけを見せる広報を戒める点で重要です。OpenAIは今後、ワークショップや会議への資金提供も予定しています。

物理:式の簡約と厳密解

  • グルーオン散乱振幅(2月):教科書的に0とされる配置が、特殊な運動量領域では0にならないことを示す。GPT-5.2 Proが複雑な式を簡約し、全nの公式を予想、内部モデルが証明。
  • 宇宙ひもの重力波(3月):Gemini Deep Thinkと木探索で、パワースペクトルの積分を任意のループ形状について厳密に解析。
  • ポッツ模型(2025):1次元フラストレート・ポッツ模型をo3-mini-highとの共同で厳密解。

生物・化学:設計と実験検証

  • Claudeのタンパク質結合体設計(8月):15標的中14で成功。ヒット率22.6〜35.1%(一般は10〜15%)。外部ラボが合成・測定。
  • Google Co-Scientist(5月、Nature):仮説の生成・討論・改良を行い、白血病の薬剤転用、肝線維症、薬剤耐性菌で実験検証まで到達。
  • 周辺:OpenAIのGPT-Rosalind、製薬企業の非公開データで学習したモデル、Arc InstituteのVirtual Cell Challenge。

批判と制度:数学界の反応

2026年9月11日、フィールズ賞受賞者28人が共同声明「数学におけるAIの深刻なミスアラインメント」を発表。「問題を解くことは、概念的な理解と洞察という主目的のための道具であり代理指標にすぎない」として、拙速な発表や帰属の問題を指摘しました。OpenAIは9月21日に独立した数学諮問グループを設けましたが、研究ペースには助言しないとしています。Anthropic CEOのダリオ・アモデイ氏は論考「We Must Pace the Frontier」で、能力向上の速度そのものを落とすべきだと主張しています。

深掘り記事

出典

  • 本特集「AI for science特集」 https://aifrontier.co.jp/ai-news/ai-for-science-open-problems-2026-10-01.html
  • OpenAI「Ten advances in mathematics」 https://openai.com/index/ten-advances-in-mathematics/
  • OpenAI「On the Navier–Stokes Millennium Prize Problem」 https://openai.com/index/navier-stokes-solution/
  • Anthropic「Riemann zeta」 https://www.anthropic.com/research/riemann-zeta
  • Anthropic「Claude accelerates protein design」 https://www.anthropic.com/research/Claude-accelerates-protein-design
  • Nature「Co-Scientist」 https://www.nature.com/articles/s41586-026-10644-y
  • フィールズ賞受賞者声明 https://mathandai.org/
  • darioamodei.com「We Must Pace the Frontier」 https://darioamodei.com/post/we-must-pace-the-frontier